2007年8月30日木曜日

なるほどコラム 【投資教育の前に算数力の向上】

お金について学ぶ投資教育が日本でも盛り上がっています。
投資の先進国ではどうなのでしょうか?
特に、中学校・高校あたりでなにをするのか、興味があります。
英国のEconomist.comの記事によれば、英国では、投資教育に関連して教育改革の論議があるようです。

「Poor young things」(かわいそうな若きものたち
2006年の政府機関の調査で、国民のお金についてのリテラシーがかんばしくないという結果が出たそうです。
そして、憂慮すべきは、若者が算数力が低く、投資教育をしようにもベースが弱いという点。
2008年からは、中等教育において「Economic well-being and financial capability」科目が始まります。
「経済的な豊かさと金融の活用力」とでも訳しましょうか。
家計管理、リスクとのつきあい方、消費者としての自覚などについて教える予定です。
また、2010年からは、16歳前後で受験するGCSEというテストのために、「機能的な算数」が必須となるそうです。
これは、予算、利息やインフレ率の計算などを含むとのこと。
金融で国力を盛り返した英国ならではの、具体的なアクションという気がします。
日本は、なんとなくイメージとしては平均的に算数力はあるのではないかという気がしています。
そうであれば、算数の応用としての投資教育を、学校でもっと行う余地はありそうですね。
これも英国人が出しているMoneySmartワークブックというのを知りました。
作者は、経営コンサルティング会社と投資銀行に勤めていた人です。
こどもの投資教育のツールに良いものがないので、自分で書いたそうです。
企業は自社製品ベースでしか考えられないので、このような思いのある個人の力が大事ですね。

2007年8月23日木曜日

なるほどコラム【カードのない人生】

Googleに押されっぱなしのマイクロソフトですが、そのインターネットサイトmsnは、moneyの内容が充実しています。
米国では売れ筋の家計管理ソフトMicrosoft Moneyと連動して、お金の基礎からマーケット情報などを載せています。

その中で、興味深いのがクレジットについての話です。
日本では、信用情報は複数の信用情報センターでバラバラに管理されており、クレジットスコアといってもピンと来ません。
消費者金融の多重債務者のチェックに活躍しているぐらいです。

一方、米国ではFICOという統一的な信用情報についてのスコアがあります。
カードを利用し、きちんと払うという履歴を積み重ねるとスコアが高くなります。
延滞があるとスコアが低くなります。

米国を旅すると、クレジットカードがないと、まことに不自由です。
学生など、どうするのだろうと思ってしまいます。
そこで、米国に「カードのない人生」はあるのだろうか?と素朴な疑問をもちました。

msn moneyに「Life without credit: tough and expensive カードのない人生:タフで高くつく」という記事がありました。
FICOの提供元であるFair Isaac(フェア・アイザック)社によれば、米国で2000万~2500万人がカードなく生活しているそうです。
また、クレジット情報がごくわずかしかない人が、この他に3000万~3500万人。

米国では、ローンを組んで家や車を買うにも、保険料率を決めるにも、場合によっては職を得るにも、クレジットのスコアがモノを言います。
クレジットスコアの履歴がないと、車や家具などの生活必需品を買うにも高利貸しのところへ行くことになります。
モーゲージローンのレートにしても、良いスコアと悪いスコアでは年利3.45%の差があると例示しています。

事実上、カードがない(すなわちクレジットの履歴のない)人生は米国ではきびしく、スコアをあげるための処方箋を説いています。

最近、米国では他人の信用情報を利用してスコアを高めるサービスというのも出ています。
Instantcreditbuilders.com などが提供していて、信用スコアの高い人のカードにおんぶする形で、カードを発行します。
スコアの計算処理上、このやり方で通常以上のスピードでスコアをアップできるそうです。
一方、これは信用情報の信頼性をゆるがす話なので、非難の声もあがっています。

日本では考えられない話ばかりですが、クレジット先進国ならではの進化なのでしょう。
米国のように、Social Security Number (社会保障番号)で背番号がつけられ、FICOで信用スコアがある、というのは社会システムとして合理的で効率的でしょう。
一方、日本は、戸籍システムは市区町村毎の管理、背番号はなく、信用情報も複数に分散という状況です。
でも、アンチ管理という意味では、このような分散・バラバラ状態にも、けっこう耐性があるのかもしれません。
単純に、秩序だって管理できているから良い、そうでないから悪い、ということでもないような気がします。

「カードのない人生」は、現金社会の日本だったら、楽勝で実現できますね。
統計的には把握していませんが、金融資産を若い世代よりはるかに多く持っている高齢層で、カードなしの人は多いのではないでしょうか。

2007年8月16日木曜日

なるほどコラム【お金のコミュニティサイト wesabe.com】

お金の管理のソフトとして、米国ではQuickenとMicrosoft Moneyというパソコンソフトがメジャーです。
私もMicrosoft Moneyを使っていますが、個人で閉じた世界で使うには極めて優れものです。
一方で、「なんとかクレジットカードの負債を減らしたい」とか、「食費を節約したい」など悩んだとき、
あるいは、「現金で車を買うために、お金を貯める」という目標を立てて、同じような目標をもつ人と交流したいとき、
パソコンソフトにはその機能はないし、mixiやmyspaceのようなSNSでも議論がぼやけがちです。
wesabe.com
http://www.wesabe.com
は、オンラインで使える無料の家計簿ソフトであり、お金のテーマでネットワーキングするコミュニティサイトでもあります。
・オンラインで資産管理を行う。
・銀行会社、証券会社、カード会社などが提供する電子明細情報をとりこみ、まとめる。
・自分のトランザクションに関連したコメントや情報を書き込む。
・ほかの人のTIPS(ヒント)を読む。(「ATM利用料を節約する」など)
・お金をためる目的を書き込んで、同じような目的をもつ人と交流する。
といった機能があります。
金融機関から明細情報をとりこむ際に、自分のパソコンにとりこむため、セキュリティのガードは堅いそうです。
(ユーザーID・パスワードをオンラインで入力することはしない)
「wesabe」というのは、Spanglish(スペイン語&英語のことだそうです)で「われわれは知っている」とのこと。
ワサビとは関係ないようです。
スペイン語の“tu sabes,”と英語の“you know.”のチャンポン。
運営者のブログを見ると、Welcomeメッセージに以下のことばがあり、共感しました。
I started Wesabe because I thought there were way too many companies out there helping businesses get more money out of consumers,
and not nearly enough helping consumers get more value out of businesses.
(自分がWesabeをはじめたのは、どこを見てもビジネスで消費者からもっとお金をとってやろうという会社ばかりで、
消費者がビジネスからもっと価値を得ることを手助けしていない、と考えたからなんだ。)
また、wesabe.comの運営者は、43thingsに啓発されたとのことです。
http://43things.com
この面白い名前のサイトは、「人にはだいたい43コぐらい、やりたいこと(thing)がある」というところから命名(???)。
ひたすら自分のしたいこと=goalを書くサイトです。
同じgoalをもつ人が何人かとか、それらの人たちの書いていることを見る、といったコミュニティになっています。
「Kiss in the rain(雨の中でキスする)」とか、けっこう楽しいゴールがあります。
やりたいことやゴールを共有するのは、自分にもまわりの人にも励みになりますね。
wesabe.comは、ベンチャーキャピタルから400万ドル(約5億円)を最近になってファンディングしたようです。
広告は載せないと宣言しているこのサイトをインキュベートしようという投資家がいるというのが、米国資本主義のすごいところです。
お金がまた新たな「何か」を創造していく。そのダイナミズムがありますね。

2007年8月9日木曜日

なるほどコラム 【募金しながら走る! justgiving】

私が前に勤めていた会社の同僚2人は、同じプロジェクトでカップルになりました。
休職して、いま5大陸をマラソンで走る旅をしています。
彼らは、
justgiving.com
http://www.justgiving.com/
というサイトを利用して、募金を呼びかけながら走っています。
彼らがチャリティの対象として選んだのは、タンザニアとケニアのHIV/AIDS孤児たちを援助するNPOです。
racearoundtheworld
http://www.justgiving.com/Racearoundtheworld
募金目標額と、現在集まった金額が、温度計のように表示されます。
私も微力ながら募金しました。
クレジットカードでの支払いなので、オンラインでできます。
英国で運営しているサイトらしく、ポンドでの支払いです。
また、英国民だと受けられるらしい税控除などの選択画面がありました。
募金者のコメントも表示され、チャリティマラソンをやっている人へのエールなどを書き込んでいます。
「各大陸のレース完走ごとに、50ポンド募金するからな!」などのメッセージが微笑ましいです。
そして、このような「Give」の文化が自然にできているのが、すばらしい!
似たような名前のサイトに
http://www.justgive.org/
というのもあります。
こちらは、米国のNPOのようです。
justgive.org
日本でも、こうした文化をもりあげたいですね。

2007年8月2日木曜日

【お金のリテラシーと教育のための委員会】

米国には、U.S. Financial Literacy and Education Commissionというのがあります。
「米国お金のリテラシーと教育のための委員会」とでも訳しましょうか。
the Fair and Accurate Credit Transaction Act (FACT Act) という法律によってつくられたものです。
2004年1月から運営がスタートしたようです。
www.mymoney.govという教育・啓蒙サイトを提供するとともに、米国内で1-888-MYMONEYという番号のフリーダイヤルを用意しています。
mymoney.com
mymoney.govでは、次のようなトピックでお金についての情報や知識を提供してくれます。
(主に、参考になる情報へのリンク集のようになっています。)
  • 「予算をたてる」
  • 「税金を払う」
  • 「クレジットカード」
  • 「ファイナンシャルプランニング」
  • 「家を買う」
  • 「こども向けコーナー」
  • 「教育費を払う」
  • 「個人情報保護、不正」
  • 「人生のイベントに備える」
  • 「退職を計画する」
  • 「貯蓄と投資」
  • 「スモールビジネスを始める」

スペイン語もあり、多様な層を対象としていることがうかがえます。

先日みたときには、スライド形式の紙芝居のような教育プログラムがありました。今週はなぜかありませんが、新しくクイズというのがあります。

いろいろと変化しながら工夫しているようです。

また、「National Strategy for Financial Literacy」という冊子をPDF形式で提供しています。
文字通り訳すと「お金のリテラシーのための国家戦略」
資本主義のメッカの凄みを感じさせます。

内容はかなり充実しています。(162ページ!)
感心するのは、序文で以下を明言していることです。

  • 年に1回、この戦略を更新する
  • すでに各所にすぐれた教育的なリソースがある。それらへのアクセスを容易にする。
    (インターネットアクセスがないとか、言語のハンディがあるとか、教育の対象になっていないとか)
  • お金の教育とマーケティングの見極めをすることをサポートする。
    (中立的な観点で情報を提供する。)
  • 公と民、民と民などのパートナーシップを推進して、総合的にリテラシーを高める。
それにしても、この委員会は、財務省を中心にFEB、SECから国防省、農業省など、多方面に横断的に組織しています。
タテ割り行政のどこかの国とは違い、動きがダイナミックですね。